否定されることを恐れながら生きている。否定をされたくなくて、ちゃんとした人間のフリをする。毎日適当に仕事をし、将来のことは考えずダラダラとパチンコをしているだけなのに、家族に対してはまるで明確な将来のビジョンがあり、そのために日々奔走しているかのような人間として振舞っている。
自分より何倍も優秀な弟に薄っぺらい人間だと思われるのが嫌で、確固たる人生観があるかのような言動をする。言葉がなにも思いつかないときは口をつぐむことで、なにを考えているのかわからないミステリアスな印象を醸し出す。
簡単な仕事しかできない人間だと思われたくなくて、簡単な仕事しか任されない自分ではなく、職場の方を見下すことで自分を守っている。まるで自分はこんなところに納まり切るような器ではないとでも言うかのように。周りを見下すことでしか自分を保てない。
こんなブログですら、良い文章を書く奴だと思われたくて使い慣れない言葉を使ったり、人の文体を真似したりしている。そんなことをしても読んでいる人には筒抜けだろうけど。たとえ周りに空っぽな人間だと気づかれているのだとしても、そのことにすら目をつぶってしまう。気づかれたことに気づいていないフリをする。
子どもの頃は少し頑張れば何をやってもうまくできたので、周りから散々ほめられた。一生分の肯定をしてもらった。よくできた息子で、可愛い孫で、自慢の兄だった。あまりに肯定されすぎたおかげで、人よりも否定への耐性がないのかもしれない。
その頃に醸成された「自分は有能な人間なんだ」というプライドは、人間としての能力が落ちに落ちぶれた今になっても当時の熱さのまま色濃く残っていて、自分を「そのプライドに見合った人間になれるように努力する」のではなく、「プライドに見合った人間だと思われるように見栄を張る」という方向に駆り立てている。プライドを守ることだけが原動力なので、中身が伴っていようがいまいが関係ないのだろう。楽をしてプライドを守れる方を選んだというだけのこと。
能力のなさを痛感する瞬間は日々の中で絶え間なく訪れるが、そのたびに歯を食いしばって見栄を張り直す。プライドを守ることが唯一の原動力で、唯一の目的で、もうめちゃくちゃになっている。自分を否定させないために、自分を否定する。