毎日18時に仕事が終わり、18時30分には最寄り駅に着いている。まっすぐ帰るかパチンコ屋へ寄るかの2択を迫られるが、電車の中でほとんど腹は決まっている。パチンコ屋へ行くと大体21時まで1円パチンコを打つ。最悪の場合1万円程負けるが、逆に2万円ぐらい勝つこともある。当たっていないときはひどく退屈なので、スマホでプロ野球の速報を見ながらハンドルを握っている。阪神タイガースが負けていると余計にイライラする。今日も負けた。打線がなかなか奮起してこない。パチンコ屋のイスの左側には肘置きがないのでずっとスマホを持っていると腱鞘炎になりそうになる。
打っている最中、こんなことやっている場合じゃないという思いはずっと頭の中にある。さっさと切り上げて自宅で本でも読んでいればもう少しマシな一日になるだろうことはハッキリとわかっているのに、体は鉛のように動かない。頭ではダメだとわかっていても、快楽の波がそれを飲み込んでいく。終業2時間前に「今日はパチンコ屋に寄って帰ろう」という思いが少しでもちらついた時点で、こうなることは避けられなかった。最寄り駅での2択など少しでも罪悪感を和らげるための便宜上のものでしかない。
明日がやってくる前に、今日貪れる分だけの快楽を貪ってしまいたいという思いがいつも根底にある。基本的に明日が来るのを恐れている。明日が怖いので今日をできるだけ快楽で埋め尽くしたいし、できるだけ引き延ばしたい。だからどれだけ疲れていてもパチンコ屋にも行くし、どれだけ眠たくても夜更かしをする。
仕事に吐くほど行きたくないというわけでもないのに、なぜ明日が来ることにそんなに怯えているのだろうとたまに思う。
職場に対して所属感が欠如しているというのは一つあるだろうか。職場の人間を味方のように思えず、なにかにつけて敵対視してしまう。別に嫌いなわけではないが、特別会いたくもない。会いたいと思える人間が一人でもいれば職場に行きたくなるのだろうか。
朝に余裕がなさすぎるというのもある。ギリギリまで寝て分刻みで準備をし、職場へ向かっている。寝て起きたらすぐに仕事に行かなければいけないというイメージが、寝ることをためらわせ、ひいては明日への恐怖に繋がっているのかもしれない。せめて30分早く起きてコーヒーでも飲む時間を作れば多少はマシになるだろうか。
寝てしまうと休みが一日減ってしまうので、金曜日や土曜日の夜ですら明日におびえている。毎日明日におびえて過ごしているので、そのために毎日快楽を貪ることになる。そのせいで自分だけが周りに置いていかれているような気がして、余計に時が経つのが嫌になる。過去の楽しかった思い出を振り返っているときが人生で一番安心する。未来は怖すぎて見たくもない。