何も続かない日記

何かを続けるために書いています。

何を考えているかわからない人

「何を考えているかわからない人」だとよく言われる。あまり自分の考えや意見を自ら口にすることがないからだ。そういうとき、つい言われた通り「何を考えているかわからない人」のフリをしてしまい、ますます「何を考えているかわからない人」と思われるようになる。本当は、何の考えも意見もないだけの人間なのに。

いや実際のところはなんらかの考えや意見はあるのだろうが、自分の思っていることや感じていることを言語化するのが苦手なのだ。特に人との会話の中で。苦手というよりも、言語化するのに人より何倍もの時間がかかる、と言った方が正しい。

こうやって文章にするとある程度言葉にすることはできるけれど、それはゆっくりと時間をかけて集中できているからであって、人との会話には一定のスピードが求められる。自分の脳味噌は基本的にとっ散らかっているので、なにか質問をされてもそのことだけに集中することができない。

「うわ難しい質問だな、どう言えば良く伝わるだろう、こういう言い方をしたら少し失礼かな、そもそも自分の考えってなんだろう、あ、間が空いてちょっと変な空気になってるな、早く答えないと、やばい、うわ顔も熱いし汗もかいてきた、こんな冷房ガンガンの部屋で一人だけ汗だくで変に思われてるだろうな、今は汗を拭くタイミングじゃないけど流石に顎まで垂れてきたらハンカチを出そう、よし、あれ待てよ、そもそも何を聞かれてるんだっけ」みたいな雑念が頭の中をビュンビュン飛び交い、気づけば質問に対する自分の考えなどとうに見失ってしまっている。

そのまま固まってしまって誰かにフォローされ、汗だくのまま何とか場は収まり、帰ってからああ言えば良かったなと死ぬほど後悔する夜を何度過ごしてきたか分からない。

そして、すぐに言語化のできないこういう自分を恥ずかしく感じている。できるだけそういう奴として見られたくないと思っている。だからこそ「何を考えているかわからない人」という評価を下されたときに少し嬉しくなってしまう。「特に大した意見も持ち合わせてないうえ、言語化が遅いだけの奴」だというのがまだバレてないことに。

そして願わくばこのまま「考えの読めない奴」だと思われ続けたくて、半ば反射的にそう思われるように振舞う。単純な意見で無理矢理議論をぶった切って、超然とした雰囲気を出してみたり。議論からわざと降りて俯瞰で見ている風を気取ってみたり。いつからこんなに外聞とプライドを守るのに必死な人間になってしまったのだろうと思う。

こんな自分を未だ肯定はできないが、こうやって文章を書いていると、少なくとも自分は何も考えていない人間ではないんだなと思えて少し安心する。このスピード感で会話をしていたい。そのためにも世の中のやりとりがすべて文通になればいい。でもそうなったらそうなったで、筆が早い人に追いつけなくて落ち込むんだろうな。生きにくい世の中だ。